コラム
Column
2024.09.24
屋根塗装の乾燥時間はどれくらい?目安と注意点を解説

屋根塗装では、色や塗料の種類だけでなく、「乾燥時間」が仕上がりと耐久性を大きく左右します。
乾燥時間を軽視すると、数年で塗膜が剥がれたり、再塗装が必要になったりと、余計な費用や手間がかかることもあります。
本記事では、屋根塗装における乾燥時間の重要性と、工程別の目安、注意すべき施工条件、信頼できる業者の見分け方まで、初心者にもわかりやすく解説します。
屋根塗装の乾燥時間が不十分な場合に起こること

せっかく費用をかけて屋根塗装を行うのですから、「できるだけ長持ちさせたい」と誰もが思うはずです。しかし、塗装工程の基本である「乾燥時間」を守らないと、その願いは簡単に裏切られてしまいます。
乾燥時間を守らないことで起こる3つの深刻な不具合を解説します。
不具合1:早期の剥がれ・ひび割れ
最も目に見えて分かりやすい不具合が、塗膜の早期剥離やひび割れです。
下の塗料が完全に乾ききる前に次の塗料を重ねてしまうと、塗料同士がしっかりと密着しません。内部に残った水分や溶剤が蒸発しようとする力で、新しい塗膜を内側から押し上げてしまい、結果として以下のような状態を引き起こします。
- 数年で塗膜が風船のように膨れる
- 日焼けした肌のように、塗装がパリパリとめくれ上がる
- 屋根全体に無数のひび割れが発生する
このような状態では、見た目が悪いだけでなく、塗料が屋根材を保護するという本来の役割を全く果たせていません。ひび割れから雨水が浸入し、雨漏りや下地の腐食に繋がる大変危険な状態です。
不具合2:塗料の性能が100%発揮されない
「この塗料は耐用年数15年です」と言われて高性能な塗料を選んでも、乾燥時間を守らなければその性能は決して発揮されません。
塗料は、ただ乾くのではなく、化学反応によって硬化し、紫外線や雨風に耐える強靭な膜(塗膜)を形成します。乾燥時間が不十分だと、この化学反応が正常に進まず、もろくて弱い塗膜しか作れません。
その結果、本来の耐用年数を待たずして、
- 新築時のような艶が1~2年で失われる(艶引け)
- 鮮やかだったはずの色がすぐに薄くなる(早期の色褪せ)
- 汚れが付着しやすくなり、コケやカビが発生する
といった劣化症状が現れます。せっかく選んだ塗料の性能を台無しにしてしまうのが、乾燥不足の怖さです。
不具合3:再塗装で費用が二重にかかる
早期に不具合が発生した場合、最も大きな問題となるのが「費用」です。
施工不良による劣化は、多くの場合メーカーの製品保証の対象外となります。もし施工した塗装業者が対応してくれない場合、数年でもう一度、別の業者に依頼して再塗装を行うしかありません。
再塗装には、塗料代や人件費はもちろんのこと、「足場の設置費用(一般的な戸建てで約20万円)」が再び満額かかってしまいます。
「工期が短い」「費用が安い」といった理由で乾燥時間を軽視する業者を選んでしまうと、数年後に数十万円の追加費用が発生し、結果的にトータルコストが大幅に上がってしまうのです。適切な乾燥時間を守ることこそが、長期的に見て最も賢明で経済的な選択と言えます。
【工程別】屋根塗装の正しい乾燥時間の目安
屋根塗装の乾燥時間は、乾燥の段階によってそれぞれ目安が異なります。
高圧洗浄後の乾燥時間:最低24時間以上
屋根塗装の前に行う高圧洗浄は、ただの掃除ではありません。塗料の密着性や耐久性に大きく関わる、塗装品質の土台となる重要な工程です。
洗浄後すぐに塗装を始めてしまうと、内部に残った水分が原因で塗膜の膨れや剥がれ、早期劣化が発生します。このトラブルを防ぐには、十分な乾燥時間を確保することが欠かせません。
| 条件 | 推奨乾燥時間の目安 |
|---|---|
| 夏場(晴天・日当たり良好) | 24時間以上 |
| 冬場(気温が低く乾きにくい) | 48時間以上 |
| 日当たりの悪い北面など | 48時間以上 |
| 雨や曇りの影響がある場合 | さらに時間が必要になる場合も |
なぜこれほど乾燥時間が重要なのか?
- 屋根材の内部まで水分が染み込むため、表面が乾いていても油断は禁物
- 水分が残っていると、塗料が密着せず剥がれや膨れの原因になる
- 完全に乾いた状態での塗装が必要(塗料本来の性能の発揮のため)
屋根塗装では、洗浄後の乾燥をしっかり待つことが、結果的に塗装を長持ちさせる近道です。見た目だけで判断せず、気温や屋根の方角に応じて乾燥時間を調整することが、失敗しない塗装の第一歩です。
下塗り・中塗り・上塗りの乾燥時間
屋根塗装は、下塗り・中塗り・上塗りと3つの段階で塗装を行います。また、乾燥時間は塗料や気温によって前後します。それぞれの段階によって乾燥時間も異なるため、事前に必要な時間を確認しておきましょう。
下塗り
高圧洗浄で素肌の状態になった屋根に、最初に塗るのが「下塗り材(シーラーやプライマー)」です。この下塗りの最大の役割は、傷んだ屋根材と、この後塗る中塗り・上塗り塗料とを強力に密着させる接着剤のような働きをすることです。
また、屋根材が塗料を吸い込みすぎるのを防ぎ、仕上がりの色ムラをなくすために欠かせません。
この重要な下塗り材が効果を発揮するためには、適切な乾燥時間が必要です。使用する下塗り材の種類や天候によって異なりますが、乾燥時間の目安は一般的に2時間〜8時間です。
中塗り・上塗りの乾燥時間
下塗りが完了したら、いよいよ屋根に色を付けていく中塗り・上塗りの工程です。ここでの乾燥時間で最も重要なキーワードが「塗り重ね乾燥時間」です。
これは、塗料メーカーが「この時間以上を空けてから、次の塗料を重ね塗りしてください」と定めている、いわば塗装における鉄則です。塗料のカタログや仕様書には必ず記載されており、私たちプロの塗装業者はこの時間を絶対に守ります。
たとえば、日本ペイント「ファインパーフェクトベスト」の場合、気温23℃で指触乾燥時間は20分、塗り重ね乾燥時間は3時間以上、7日以内が目安です。また、関西ペイント「アレスダイナミックルーフ」は、気温23℃で塗り重ね乾燥時間は4時間以上7日以内が目安です。
参照
この時間を守らないと、下の中塗り塗料が乾ききらないうちに上塗り塗料のシンナーが反応してしまい、塗膜がシワシワに縮んでしまう「リフティング」という現象を引き起こすことがあります。
逆に、乾燥させすぎても塗膜同士の密着性が悪くなる場合があるため、メーカーが定めた規定時間内に次の塗装を行うことが、美しく強い塗膜を作るための絶対条件なのです。
乾燥の段階における乾燥時間
屋根塗料における、乾燥の段階について解説します。
第一段階:指触乾燥
指触乾燥とは、塗膜に指で触れて塗料がつかない程度に乾燥することです。1〜2時間程度が目安。ただし表面だけ乾燥していて内部は乾燥していないので、まだ重ね塗りはできません。
第二段階:半硬化乾燥
半硬化乾燥は、塗膜を軽くこすっても傷がつかない程度の乾燥で、数時間から丸1日程度かかります。この状態であれば重ね塗りが可能です。
第三段階:硬化乾燥
硬化乾燥は、塗膜を強くこすっても傷がつかないほど乾燥した状態で、1週間程度の乾燥時間が必要です。
第四段階:完全乾燥
完全乾燥は、塗膜の中まで完全に乾燥した状態です。塗料や気温によって、2週間〜数ヶ月ほどかかる場合があります。
屋根塗装の乾燥時間を左右する4つの要因
屋根塗装の乾き具合を大きく左右する要因が4つあります。
- 【要因1】気温と季節
- 【要因2】天候と湿度
- 【要因3】塗料の種類
- 【要因4】屋根材の種類
まず、屋根塗装で大きな影響を与えるのが、気温や湿度といった環境的な要因です。一般的に、塗料の乾燥をスムーズに進めるために「気温5℃以上・湿度85%未満」という基本条件を守る必要があります。この基準を下回ると、塗料の化学反応がうまく進まず、塗膜がうまく固まらなかったり、仕上がりにムラが出たりする恐れがあります。
また、塗料の種類によって、乾燥にかかる時間や塗膜の強さが変わります。施工前に塗料のタイプを理解しておくと、仕上がりのイメージやスケジュール感がつかみやすくなります。
そのほかにも、塗装対象の屋根材そのものも乾燥スピードに大きく関わっています。素材によって性質が異なるため、適切な乾燥時間を見極めることが必要です。
とはいえ、一般的にこのような条件や特徴を見極めるのは困難です。そのため、事前にしっかりと施工店と打ち合わせることが欠かせません。
こんな業者には要注意!乾燥時間を守らない業者を見分ける3つのポイント
塗装の仕上がりは、業者の知識と姿勢に大きく左右されます。ここでは、乾燥時間を軽視する危険な業者の見分け方を、3つの視点から解説します。
ポイント1:異常に短い工期を提案する
「足場設置から解体まで7日間以内」といった極端に短いスケジュールを提案する業者には注意が必要です。
実はこのような工期では、本来必要な乾燥時間が十分に確保されていない可能性が高いのです。
例えば…
- 高圧洗浄後にすぐ塗装され、屋根内部の湿気が抜けきらないまま塗料が乗ってしまう
- 各塗装工程の乾燥時間を省略し、密着不良や塗膜の剥がれにつながる
- 乾ききらない塗膜の上に次の塗料を重ねて、ふくらみ・ひび割れ・リフティング現象が起きる
といった不都合が生じる可能性もあります。工程表やスケジュールを確認し、「高圧洗浄後の乾燥時間」や「各塗装後の待ち時間」が記載されているかをチェックしましょう。
ポイント2:作業報告が曖昧
塗装工事の品質は、職人の腕だけでなく「報告の丁寧さ」でも見えてきます。「今日は中塗りを行いました」という一言だけの報告では、作業内容の信頼性が判断できません。
本当に大事なのは、「何を・いつ・どのように行ったか」まで具体的に伝えてくれるかどうかです。
| 報告のタイプ | 内容の具体性 | 信頼性 |
| ✖ 曖昧な業者 | 「本日は中塗りを行いました」 | 工程や乾燥時間の 遵守が不明 |
| ◎ 丁寧な業者 | 「下塗り後に4時間乾燥させ、 13時から中塗りを開始しました」 | 乾燥時間を守って いることが伝わる |
このように、工程ごとの判断や配慮まで説明してくれる業者は、経験も意識も高い証拠です。
ポイント3:「天気が良いので早く進めます」という言葉
一見すると親切で頼もしい言葉に聞こえますが、その裏に潜むリスクに注意が必要です。この言葉をそのまま受け入れてしまうと、本来必要な乾燥時間を省かれてしまう恐れがあります。
天気が良い=何でも早くできる、ではありません。むしろ天気が良いからこそ、乾燥時間を正確に守って塗装できるチャンスなのです。「なぜ早めるのか」「何を省略しているのか」まで説明できるかが、業者の誠実さを見極めるカギになります。
屋根塗装の乾燥に関する注意点

屋根塗装の乾燥に関する、以下の注意点を解説します。
- 乾燥に時間を取りすぎない
- 屋根塗装を実施する時期に注意する
乾燥に時間を取りすぎない
乾燥時間は十分に取る必要がありますが、乾燥時間をあけすぎるのもよくないとされています。
乾燥時間が長すぎるとその間にゴミや埃、塵などが付着してしまい、上に塗り重ねる塗料が定着しなくなってしまいます。ただし、乾燥時間を十分に取らないまま次の工程に移るのは禁物なので、乾燥時間をきちんと守る業者を選ぶことが重要です。
屋根塗装を実施する時期に注意する
屋根塗装は、気温が高いほど乾燥する時間は短くなります。一般的に、寒い時期より気温が高い時期の方が屋根塗装には適しています。
ただし梅雨の時期で雨が多く作業ができない日が続いたり、気温が高すぎて作業員の安全面から作業が難しくなったりすることもあるため、時期選びに注意が必要です。
まとめ
屋根塗装を成功させる最大のポイントは、工程ごとに十分な乾燥時間を確保することです。見た目だけで判断せず、気温・湿度・塗料の種類・屋根材の性質をふまえて、丁寧に時間をかけることが、塗膜の密着性や耐久性に直結します。
また、工期の短さや「天気が良いから大丈夫」といった言葉の裏に、乾燥時間の省略というリスクが潜んでいないかもチェックしましょう。
Studioテツでは、こうした乾燥管理を含めた丁寧で誠実な塗装工事を心がけています。屋根塗装をご検討中の方は、ぜひお気軽にご相談ください。